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キャピラリーGCカラムキラー(カラムを劣化させる原因) Part 4(日本語)

31 May 2012

水分の注入

キャピラリGCカラムの性能を劣化させる原因の最後の章では、水分の注入に関して書いてみたいと思います。GCに水分を注入することに関しては多くの誤解もあると思いますし、確かにその理由も間違ってはいません。電子機器に水分は禁物であるという一般的な知識の他に、分析者の多くは水分をGCに注入した場合、クロマトグラフィーで何かしらの問題を経験しています。

ポリマーが架橋結合しているほとんどの結合型カラム固定相では、水分の注入よるダメージはありません。しかし、非結合型カラム、部分的な結合型カラム、または極性カラムなどの固定相では、水分の注入は避けるべきです。

ご使用のカラムが完全に架橋結合されたものであるかどうかは、メーカーの説明書をご参照ください。Restek社の場合、カラムの名前がRtx-___、 Stx-___ または Rxi-___ で始まるものは、完全に架橋結合されたものです。また、ほとんどのMXTカラムも完全に架橋結合されたタイプのカラムです。しかしRestek社のカラムで、Rt-___ で始まるものは完全には架橋結合されていません。一般的には、完全に架橋結合されていないタイプのカラムに水分を注入すべきではありませんが、いくつかの例外もあります。

1.  多孔質のポーラスポリマーPLOTカラム:Rt-Q-Bond、 Rt-QS-Bond、 Rt-S-Bond、そしてRt-U-Bondと呼ばれているポーラスポリマーPLOTカラム(MXTタイプも含め)は、水分によるダメージを受けません。ただし、Alumina または Molecular Sieve PLOTカラムには水分を注入しないでください。水は吸収され、分離や保持時間に影響を及ぼします。(注:水分の吸収は可逆的です。使用可能な最高温度で数時間エージングすることで再生できます。)

2. 非結合型、部分的な結合型、または極性カラムで水分を注入する場合、カラム内で水分が凝縮しないようにカラム温度を十分高く保つ(80℃以上)か、極性不活性化処理済みガードカラムを分離カラムの前に取付けます。これにより、水分は水蒸気の状態で分離カラムへ到達します。

上述のように、水自体はほとんどの架橋結合型カラムにダメージを与えることはありませんが、水溶液中に含まれる粒子状物質、塩、糖、溶解している金属塩や浮遊している金属などの不揮発性成分により、カラムの劣化が引き起こされ、またカラムの性能が悪くなることがあります。水分の分析でクロマトグラフィーの劣化が起こった場合、(注入口のライナーに残留物が残っていないかどうか確かめるなどして)不揮発性の不純物が問題を引き起こしていないかどうかを検証し、注入前に試料/抽出物から不純物を取り除く操作をしてみてください。これらの操作は、試料のクリーンナップ/フィルタリングという前処理でできます。もしこれらのクリーンナップ/フィルタリングという前処理ができない場合、不活性化処理済みガラスウールまたはRestek社のCarbofrit を充填したライナーの使用をお勧めします。

ここまでに記した内容は、不活性化処理済みライナーを用い、加熱されたスプリット/スプリットレスを使用して、スプリット分析をおこなっている場合を想定しています。これ以外の注入方法では、水溶性試料の分析は非常に困難です。中でも、オンカラム注入法は、もっとも難しいものです。Restek社のテクニカルサポート部門では、オンカラム注入法での水分の注入はお勧めしていません。オンカラム注入法で水分を注入して、問題なく良いクロマトグラムと再現性のある結果を得ている場合もありますが、たいていの場合、解決することのできない多くの問題点を抱えています。GCのオーブンでしか加熱できないオンカラム注入法では以上のことは顕著で、GCのオーブンとは独立して加熱できるタイプのオンカラム注入口ではこの限りではありません。

オンカラム注入での水分の分析の場合、完全架橋型のカラムを使用していても、極性不活性化処理済みガードカラムを使用することをお勧めします。このガードカラム(リテンション・ギャップ)は、無極性のカラム液相を使用した場合のカラム内表面の濡れを改善し、さらに、カラムに不揮発性成分が入るのを防止します。

シリンジで水溶性試料を分析する場合のいくつかの注意点を以下にまとめてみました。

  • まず最初に、バックフラッシュを常に考えてください。水は気化すると体積が1400倍に膨張します。注入量は出来る限り少なく(0.5µL以下)し、ライナーは、GCで使用できる最大の径のものを使用してください。
  • 次いで、スプリットレス注入あるいは直接注入よりも、スプリット比の大きいスプリット注入をお勧めします。
  • 3つ目は、より良い再現性を得るために、プランジャの先端にPTFEのチップが着いたガスタイトシリンジを使用することです。

“キャピラリGCカラムの性能を劣化させるもの”はすべての問題を網羅している訳ではなく、カラムにダメージをいくつかの状況を詳しく解説しています。これらの情報により、分析者がコントロールすることのできるいくつかの要因から、カラムを保護することができるようようになれば幸いです。